エンジニアが起業する環境が整っていくこと

http://blog.ycombinator.com/announcing-the-safe-a-replacement-for-convertible-notes

1 comment | 0 points | by WazanovaNews 3年以上前


Jshiike 3年以上前 | ▲upvoteする | link

「Web/スマホエンジニアのためにクオリティの高い開発ノウハウがたまる場」をつくりたくてワザノバを始めたという経緯があったので、サイトの趣旨とちょっと違うかなと思い、ワザノバで起業の話しは今まであまり取り上げてきませんでした。しかし、今日は休日なのでちょっと違った話題をということと、Ycombinatorの発表した"Safe"が、手法としてはけっして目新しいものではないですが、エンジニアが起業する環境を整えるという視点から意義のあるものだと思ったのであえて書きます。

起業して一番やらなくてはいけないのは、サービスを磨くこと。当たり前のことですが、現実はそれ以外にやらねばいけないことがあるので、なかなか100%の時間を使えないのが悩み。Ycombinatorが、Founderは2人以上でと主張しているのは、複数人のほうが開発も進むし、アイデアも磨けるし、精神的にも安定するというのもあるのですが、一人の場合、資金調達の交渉に没頭するとサービスを成長させるために時間がまったく使えなくなるという、本末転倒のことが起こりうるからです。

私も、起業時点の話ではないですが、かつてアーリーステージ企業の買収交渉をしたとき、その企業が交渉にかかりっきりになって(相手方が相当売りたかったのもあるでしょうが、条件交渉したり、事業の状況を説明するために数字を揃えたり、けっこう手間がかかります。)、気づいたらその会社は開発がどんどん遅れて、トラフィックがまったく伸びなくなったのを目にしました。

1) 起業のインフラ

エンジニアが起業をする際のインフラというと、テクノロジー、会社設立などの法的なもの、資金調達に大きくわけられると思います。テクノロジーについては皆さんご存知のとおり、かつての高価なサーバを購入してオフィスを借りてという時代に比べると、クラウド + コミュニケーションツール + Google Appsくらいで、ほぼ固定費がかからなくなってます。ワザノバも月額数千円というレベルでしょうか。またバックエンドの自動化がさらに進んで、サービスの初期開発とiterationに費やす時間も減ってくると、必要な売上をあげるまでサービスをスケールさせていくコスト & 時間も改善していきます。

会社の設立も米国ですと数日あれば完了。ワザノバの設立は将来のことを考えて弁護士にお願いしましたが、その前に一時的に設立した個人会社は、自分でネットでやって、2日 & 300ドルくらいでできました。日本で会社をつくったことはないですが、設立手続きは随分簡単になったと聞いてます。

資金調達も、米国では、AngelListの存在感がどんどんあがってきているので、かつてはクローズドであった投資家とのやりとりがオープンなマーケットプレースで行われる(交渉経過がオープンになるわけではないです。投資募集 & 投資家との接触が便利になるという意味。)ことで、プロセスは相当楽になっていきそう。そこで残る課題は、契約内容。ここは手法によって、メリット/デメリットそれなりにあるので、一概に決められませんが、Ycombinatorの提案は一理あり。その点を続いて解説します。

Disclaimer: 私は弁護士ではありません。素人のブログを丸のみに信じたりは決してしないでください。あくまで個人の現時点の認識におけるコメントです。皆さんが実際にやるときはプロの弁護士に必ず相談してください。以下の話はあくまで参考程度ということで。

2) 資金調達の条件

米国の事例です。

Equity Investment

株式投資、つまり投資をしてもらう見返りに株主になっていただくという、一番当たり前の手法。現在および将来にわたるお互いの権利/義務を決めてから投資しますので、理論的には一番公平な仕組みです。

理論的というのは、詳細を決めるので契約書が相当な量になる。また、交渉して決めなくてはいけない項目が当然多い。交渉すると言っても、内容がよくわかってる投資家と、はじめてで面食らう起業家では、そもそも交渉力が違いすぎる。弁護士に頼るといっても、将来どこかで仕事をくれるかもしれない投資家と、失敗する可能性が高く今回限りの付き合いになりそうな起業家とを天秤にかけたときに、起業家だけが有利になるように交渉を決着させようと弁護士がアドバイスしてくれると考えるのは楽観的すぎ。(もちろん、弁護士の義務として、顧客である起業家にアドバイスはしてくれます。)

また、何パーセントをもつ株主になるかを計算するのに、バリュエーション(企業価値)を決めますが、「将来はFacebookになってやる。」と思ってる起業家と、バリュエーションを低くして持ち分比率をあげたいという投資家が、将来性を証明できる材料が少ない起業時点で、納得感あるバリュエーションを決めるというのは難しい。

ということで、起業家が納得できる(もしくはよくわからないから納得したことにする)ならベストの手法ですが、起業家側が知識量的に不利なのと、契約締結までに時間がかかりすぎるのがネック。

Convertible Note (Debt)

転換社債と訳すと、日本だと大企業が株式市場から社債で資金調達するみたいに聞こえてしまうかもしれませんが、米国では、スタートアップの資金調達の手法として、一般的です。

Convertible Noteは、簡単に言うと、将来の資金調達の際に有利な条件で株主となる権利を取得する。一般的には、投資したカネの20%増しの株式を将来もらえます。また、会社を売却したとき、もしくは清算したときに、投資した金額の2倍を回収できるという条件を付加することもあるかも。(最近はあまりないと思いますが。)

なぜ、Convertible Noteか受入れられているかと言うと、契約書が数枚で、交渉することもほとんどないので、契約がすぐに完了する。現在のバリュエーションを決める必要がない。というあたりで、関係者は皆、とにかく楽です。

ただし、Note(債券)なので、建て付け上は、満期と金利があります。満期がきたのでカネを返せと言っても、スタートアップ企業にはカネはないので、実際にはほぼ返ってきません。また、米国では法人の責任と個人の責任が法的にしっかりわかれてる(日本はどうなんでしょう?銀行の担保の考え方の延長で、昔は個人保証的なものがあったのかもしれませんが、さすがに最近のアーリーステージの投資ではないのでしょうか。)ので、Founderの個人資産から返せというのはない。なので、実務的には期間を延長するしかないので、その時点ではちょっと面倒。このリスクをヘッジするために、比較的小額、数百万から数千万円の範囲で適用される投資手法ということと、投資家は20%増しの権利をもらうということになってます。とはいえ、借金なのに返済される可能性が低いというのも、ちょっと仕組みとしては建前と本音が違っていて、変かも。

Safe

そこで、今回Ycombinator発表したのがSafe。借金ではなくて、株式購入権の取得と言えると思います。

満期と金利がなくなるので、延長手続きからも解放されます。また、将来の増資時点で株式を同じ所有比率まで買います権利が投資家に与えられるようです。ざっと読んだとことろ、それ以外は Convertible Equityとほぼ同じようです。(Dicount, Capなどの詳細説明は今回の記事のスコープではないので割愛します。)

ちなみに、Safeと似たようなスキームは、以前にもYokumが発表してますが、投資家/起業家ともに公平だとされてる仕組みかと。

今回の意義としては、Ycombinatorが発表したので、右に倣えということで、米国内では一気に標準として普及が進む可能性があるということでしょう。

3) 日本ではどうなの?

このあたりは日本の状況はどうなんでしょうか?アーリーステージの投資家が少ないと聞いてますので、そのような需給バランスの市場では、リスクをとるアーリーステージの投資家の取り分(何パーセントの株主になるか。)が米国よりも高くなるのではないかと想像してます。(それが、悪いという意味ではないです。その市場において、取り分に見合う貢献をしているのでしたら投資家として当然とるべきものはとるということ。取り分に相当する貢献がない場合は、日米に関わらずダメですし、それは、その投資家を選んだ起業家にも責任あり。)米国では、AngelListの前身の、Venture Hackが、クローズドだった投資家との交渉条件をオープンにするのに随分貢献しましたが、日本でも同じような取組みがあり情報が公開されていたりするのでしょうか?

いずれにしても、サービスを磨くことが本分のエンジニアが起業を志したときに、やるべきことに集中できる環境が整うことを期待してます。ワザノバも、サービスを磨くための開発ノウハウ提供という意味で、貢献できるとちょっとうれしいです。


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#ycombinator #起業 #スタートアップ

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