オープンソースと特許とテスラの決断

http://www.teslamotors.com/blog/all-our-patent-are-belong-you

1 comment | 1 point | by WazanovaNews 3年以上前 edited


Jshiike 3年以上前 edited | ▲upvoteする | link

今朝テスラがブログで発表した内容は、「オープンソースの精神にのっとり、テスラの保有する特許を他社/他者が利用しても訴訟をしない。」ということ。適用されるオープンソースのライセンスが明示されていないところから考えるに、純粋にオープンソースではなくて、無料もしくは無料に近いかたちでのライセンス契約が必要になるかたちになるのかなと想像してます。

1年ほど前に、ソフトウェアでオープンソースが広がり、サーバ周辺のハードウェアでもオープンソースのプロジェクトが進みはじめた中、製造業のオープンソース化はくるのかという議論をしたときに、私はちょっと根拠の薄いあるべき論から、「衆知の集結によりトータルバリューがあがるはずなので、製造業もオープン化はゆっくりでも不可逆的に進む。」と主張したのですが、製造業勤務一筋の方からは、「中小製造業が生き残っている生命線なので、特許は企業戦略の中心として強く残り続ける。」という反論を受けたことを思い出しました。

完全なオープンソースでないにしろ、テスラという製造業の本丸である自動車産業が、知的財産のオープン化に踏み出したのは大きなステップかと。そのトリガーを引いたのが、ソフトウェア産業であるPaypal出身のElon Muskであったのが、感慨深いです。

特許をとりまく法制度は、しょうもない特許を元に成功している企業を無差別乱射的に訴訟に巻き込んで和解金をせしめるパテントトロールを完全には退治できてません。まあ、誰が本当に悪意をもった訴訟なのかのラインが引きづらいので政治や法的に対処しづらいのはわかる気もしますが、最近は法務部が手強い大手企業でなく、そこそこ売上があがりはじめたスタートアップを狙ってきているので、本当に最悪です。こういう現世の矛盾に対して、オープン化というビジネス戦略で、特許を取り巻くすっきりしなささが、予想しなかった方向から解決されていく、つまり特許の役割がどんどん薄くなっていくことになるのでしょうか。

オープンソースが世の中のためになるというユートピア論はさておき、ちょっといやらしいですが、ビジネス戦略視線での意味づけについては、ネットビジネスに席を置く自分でも、どうするのがメリットなのか悩むことがあります。

例えば、ディスカッションフォーラムのプラットフォームとして伸びてきているDiscourseはオープンソースです。ビジネスモデルとしては、自前でホスティングする企業は無料ですが、Discourse側がホスティングする場合に売上がたちます。GPLライセンスなので、そのソースを利用して他者に配布する場合は、ユーザDBを共有する機能レベルで追加したソースコードは元のライセンス者(この場合はDiscourse) に提供しなければいけませんが、逆にそれさえよければ、他社がホスティングサービスとして商用利用することを止められないと思います。法律の専門家でないので細かい解釈は違ってるかもしれませんが、ポイントは商用サービス利用を完全に止められないのに、ソースを全てオープンにしていること。ビジネス上のメリットが自分的にはすぐには腹落ちしませんでした。

しかし、よく考えてみると、Discourseは最初に発表した時点で既に競合よりもかなりつくりこんだサービスでした。しかも、Stackoverflowを成功させたJeff Atwoodのプロジェクトです。この分野において一番になれるという自信があれば、1) オープンソースにしてこの分野での開発者コミュニティを最大限ひきつける、2) 他者が丸っとコピーして競合しても、Discourse側が本流だと世の中が思うはず、3) ソースを公開しているので、競合が同じような機能を差別化に利用できない、つまり無力化できる、4) 無料なので自分たちの仕様が世の中の標準になる確率が高い、ということかと。

ですので、ある分野で先行していれば、オープンにした方が戦略的には正しいとなります。けど、この決断は相当勇気が要ります。「競合の方が人気がでて主流になってしまったらどうしよう。」と不安になるはずです。まさに、王者の戦略ですね。

テスラも勝ち組になるのが見えてきたこの段階でオープン化に踏み切ったのも、世の中のポジティブな反応に後押しされて、自分たちがメインストリームである感が強化され、競合は二番手以降のイメージが確定しテスラをひっくり返しづらくなるという、強いものがもっと強くなるという自信の表れでしょう。(純粋に電気自動車をもっと普及させて、充電インフラが充実するようになるのをプッシュすべきという意味もあるでしょうが。)

一昨日発表されたDockerビジネスモデル構想も、開発/本番アップ/運営のワークフローを握りつつ、オープンソースプロジェクトとしての繁栄と、エンタープライズ系の3rd party企業との共存を狙った、野心的なものでした。

オープンソースを利用したビジネスモデルが進化してきてます。オープンとクローズドをいつどの段階でどううまくバランスを取るかの意思決定が成功の肝になる時代がきました。

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